はじめに|本記事で扱う前提について
本記事は、筆者が実際に勤務している「欧州系の外資系IT企業(日本法人)」での実体験をもとに執筆しています。
評価制度や昇進の仕組みは会社ごとに異なりますので、あくまでも一例としてご覧ください。
本社が欧州にある企業の多くは、ワークライフバランスを重視し、透明性の高い評価制度を掲げていますが、その中身は企業文化や事業形態によって大きく異なります。この記事では、そのような欧州系外資のリアルな「評価」と「昇進ルール」について、できる限り丁寧に解説していきます。
1. 外資=成果主義?まずは誤解から整理しよう
「外資は成果主義」「数字がすべて」というイメージを持つ人も多いと思いますが、実際にはやや誤解があります。
たしかに成果は重要ですが、私の勤める欧州系企業では「成果に至るプロセス」や「チームとの連携」「改善への姿勢」なども含めて評価されます。
特に欧州系では、短期的な結果よりも「持続的な成果」や「コラボレーション力」が重視される傾向にあります。評価においても、数字のインパクトだけでなく、そこに至る工夫やフィードバックサイクルも加味されます。
2. 評価の仕組み|どう査定されるのか?
評価は年に1〜2回行われ、基本的には「上司との1on1でのレビュー」+「360度評価(同僚や関連チームからのフィードバック)」の組み合わせで決まります。
期初に設定する「目標(Goal)」は、自分と上司の間ですり合わせて明文化され、その達成度に応じてレビューされます。この目標はOKRやSMARTに基づいており、定量目標だけでなく定性目標も含まれる点が特徴です。
また、SlackやTeamsでの貢献、知見の共有、ピアレビュー文化など、チーム活動やコラボレーションへの貢献も見られます。
「目立つ仕事だけしていればOK」というわけではなく、地道な行動が思わぬ高評価につながるケースもあります。
3. 昇進・昇格はどう決まるのか?
昇格には「タイムライン」がありません。たとえば新卒2年目で昇格する人もいれば、5年目でも据え置かれる人もいます。昇格基準は「期待役割をどれだけ超えているか」によって判断されます。
職位は多くの場合「ジョブグレード」で管理されており、Associate → Consultant → Senior Consultant → Manager のように明確な階層があります。
自分が次のレベルに見合う実績・スキルを備えているかどうかは、自己申告制ではなく、上司や周囲の推薦に基づいて議論されます。
昇進にあたっては、直属上司のレビューに加え、「プロモーションパネル」と呼ばれる複数人による評価会議が行われる場合もあり、主観を排除する工夫がなされています。
4. 評価における“見えない壁”とその乗り越え方
外資といっても、評価に100%の客観性があるわけではありません。たとえば、英語力が高い人のほうがプレゼンスを発揮しやすい、プレゼンが上手な人が目立ちやすいなど、「発信力」が評価に影響する場面もあります。
また、文化的な背景が違う上司に評価される場合、価値観や期待値の違いがギャップになることもあります。
欧州系であっても、評価者が米系出身だったり、上層部の多くが英語ネイティブだったりすると、非ネイティブは立ち回りに工夫が必要です。
この壁を乗り越えるためには、
- 「見える形での成果報告」
- 「ロジカルな自己説明」
- 「周囲への事前の情報共有」
など、“プロモーションを戦略的に支援する姿勢”が不可欠です。
5. 外資系における昇進の「リアル」な難しさ
昇進は論理的に行われるように見えても、実際には「人の推薦」「タイミング」「人事の枠」などの要素が絡みます。
いわゆる「上司ガチャ」の影響もゼロではありません。
昇進したければ、日々の業務だけでなく、「この人に次のレベルを任せたい」と思ってもらえる信頼構築も大切になります。
また、タイミング的に上のポジションが空いていない場合は、どれだけ優秀でも数ヶ月〜年単位で待たされることもあります。
こうした背景を知っておくことで、昇進できない=評価されていない、という早とちりを避けることができます。
6. 日系と比べてよかった点・しんどい点
日系企業と比較して良い点は、
- 「上が詰まっていない」ため、実力次第で早期昇進できる可能性がある
- 昇格すれば給料も明確に上がる
という点です。
一方で、「待っていれば昇進する」という概念がないため、
- 自分からアピールする
- 実績を“見える化”する
- Slackやドキュメントで記録を残す
といった地道な行動が重要です。
「気づいたら昇進していた」ではなく、「昇進するには戦略がいる」のが外資のリアルです。
7. まとめ|評価は戦略で動かせる
外資の評価制度は、確かにシビアです。でもそれは「合理的で、戦略的に動けば報われる」仕組みでもあります。
私自身、最初は「上司が全部見てくれているだろう」と思っていましたが、それでは足りませんでした。
今は、目標の立て方・共有の仕方・成果の報告・周囲との関係構築まで含めて、自分の“プロモーション戦略”を持つようにしています。
昇進は運やタイミングも絡みますが、それでも「備えていた人」にチャンスは来ます。
英語が苦手でも、目立たなくても、正しく準備すれば評価される。
それが、僕がこの会社で学んだことです。